そばの香りはどこから来る?
粗挽きが香り高い理由
―KONA博士が語る“そば香りの秘密”
最近、大西製粉には、そばの香りに関するお問い合わせが増えています。
「なぜ粗挽きそば粉は香りが良いの?」
「石臼挽きとロール挽きで香りは違うの?」
「そばは麺に鼻を近づけても香りが弱いのはなぜ?」
そこで今回は、そば粉と香りの専門家である KONA博士が、
香りの成分・製粉・食べ方まで、科学と伝統の両面から解説します。

KONA博士 登場
こんにちは、クラコナ博士じゃ。
わしは88歳、若いころ世界を旅して粉料理を食べ歩いた
「粉の研究者」じゃよ。
そば粉や小麦粉のことなら何でも聞いてくだされ。
今日は、そばの香りの正体、そして粗挽きの香りがなぜ強いのか、
日本の粉食文化の知恵と科学で分析していくぞよ!
そばの香りについて Q&A



Q1. そばの香りはどんな成分なの?



そばの香りは一つではなく、複数の香り分子が折り重なってできる複雑な香りじゃ。
● サリチルアルデヒド
新そば特有の青々とした爽やかな香り。
● グリーンノート系揮発物質
草のような若々しい香り。
● 焙煎ナッツのような香り(脂質分解)
焼き栗のような香ばしさ。
● ポリフェノール由来の香り
甘皮(黒皮)に多く含まれ、粗挽きほど強く感じる。
つまり「青さ × 甘さ × 香ばしさ」が重なった“香りのアンサンブル”なのじゃ。



Q2. なぜ、そばの実は粉にしないと香らないの?



果物は切る前から香るが、そばの実(玄そば)は香らん。
理由は明確で、
✔ 香り成分が細胞の奥深くに閉じ込められている
✔ 黒い殻(外皮)が非常に硬い
✔ 丸抜き(殻を剥いた状態)でも細胞壁が壊れていない
つまり、
粉砕=香りの解放
という構造なのじゃ。
そば粉が「挽きたてほど香りが良い」のはこれが理由じゃな。



Q3. 微粉(細かい粉)は香りが強いって本当?



これは「半分正解・半分まちがい」じゃ。
◎ 正しい部分
細かい粉ほど細胞が多く壊れ、香りが空気中に一気に放出される。
だから微粉は挽きたての香りが強い。
✕ 不正解の部分
細かい粉は表面積が大きいので、空気に触れる量も増え、
香りがすぐに飛んでしまう。
つまり、
微粉 → 発香は強いが長持ちしない
粗挽き → 発香は控えめだが香りが持続する
という違いになる。



Q4. なぜ粗挽きそばは“香りが良い”と言われるの?



理由は4つある。
① 甘皮が大きく残る
甘皮は香り成分の宝庫。粗く挽くほど香りの核が生き残る。
② 石臼挽きは“低温粉砕”で香りを守る
ロール挽きは高速で摩擦熱が出やすい。
香り分子は熱に弱いので、香りが飛びやすい。
一方、石臼挽きはゆっくり低温で挽くため香りが守られる。
③ 粒の内部に香りが閉じ込められる(保香効果)
粗い粒は内部に香気成分を閉じ込めたまま麺になる。
茹でる→噛む→粒が崩れる→香りが広がる。
食べる瞬間に香りが“爆発”する。
④ そばは“啜ることで香る”料理
そばに鼻を近づけても香りは弱い。
香りの本番は「逆流香(レトロネーザルアロマ)」じゃ。
ズッズッと啜ることで湯気と香りが鼻腔に抜け、豊かな香りが感じられる。



Q5. なぜ江戸っ子は「ズッズッ」と音を立てて啜ったの?



そばは啜ることで香りが完成する料理。
ズッズッと勢いよく啜る
↓
湯気が空気ごと口に飛び込み
↓
香りが鼻腔に抜ける
↓
喉を通る瞬間に最高潮
これが江戸の“粋(いき)”であり、香りを最大限に楽しむための食べ方じゃった。
KONA博士のまとめ
・ そばの香りは、甘皮・胚乳・脂質が作る複雑な香り
・ 粉にして初めて香りが解放される
・ 微粉は香りが出やすいが、飛びやすい
・ 粗挽きは香りを保持し、食べる瞬間に最高潮
・ そばは啜ってこそ香りが完成する料理
・ ズッズッと啜る文化は、香りを食べるための知恵
そばは、香りを食べる料理じゃ。
香りを最大限に楽しむなら、石臼で挽かれた粗挽きそば粉が唯一無二。
日本の粉食文化を知り、そばを啜り、そばを楽しみ、
“豊かなそばのある暮らし”をおくってくれ。


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