「2026年 北海道そば産地視察|今年の新そばを自分の目で確かめてきました

2026年 北海道そば産地視察

音威子府そば畑
目次

今年の新そばを、自分の目で確かめてきました

こんにちは。大西製粉の大西響です。

9月2日から4日まで、北海道のそば産地を視察してきました。

今回訪れたのは、下川町、美深町、音威子府村、沼田町など、当社が北海道産玄そばを仕入れるうえで関わりの深い地域です。

そば粉は、製粉方法だけで品質が決まるものではありません。

どんな土地で育ったのか。
今年の天候はどうだったのか。
収穫した玄そばを、どのように乾燥・調製・精選しているのか。

そして何より、誰がつくっているのか。

私たち製粉会社にとって、それを自分の目で確かめることはとても大切だと考えています。

今回は3日間かけて、今年の北海道産そばを見てきました。


1日目 旭川へ。そばの前に北海道の歴史を学ぶ

旭川到着後、まず向かったのは北鎮記念館です。

旭川には、かつて陸軍第七師団が置かれていました。

私は漫画『ゴールデンカムイ』が好きなのですが、館内では自衛隊の幹部の方が、作品に登場する場面も交えながら丁寧に案内してくださいました。

『ゴールデンカムイ』だけでなく、司馬遼太郎の『坂の上の雲』、『沈黙の艦隊』、『満州アヘンスクワッド』など、これまで読んできた作品の背景にある近代史ともつながり、とても興味深い時間になりました。

北海道の農業を知るうえでも、「今ある畑」だけを見るのではなく、この土地がどのように開拓され、人が暮らしてきたのかを知ることは大切だと感じます。

刺身盛り合わせ うに、くじら、サンマ、
つぶ貝

夜は、旭川のそば製粉会社である土開製粉の藤岡社長と会食。

旭川の居酒屋「めいじ家大舟」で北海道の海の幸をいただきながら、近況や業界動向について情報交換しました。

いろいろな話をしましたが、やはり最後に行き着くのは玄そば、製粉、そば屋さんの話。

同業者と話していると、結局そこに戻ってきます。


2日目 下川町へ。まずは土づくりから

北はるか農協下川地区キタミツキ

朝8時に旭川を出発し、下川町へ向かいました。

JA北はるかの森さんと情報交換した後、そばの乾燥・調製施設を見学。

その後、実際のそば畑へ向かいました。

案内してくださった佐藤さんは、元試験場の研究員。

現在は農業を営みながら、下川地区そば生産組合の副組合長も務めています。

畑で特に興味深かったのが、土壌の話です。

畑は作物を育て続ける中で酸性側へ傾くことがあり、必要に応じて石灰資材を使い、土壌の状態を調整していくそうです。

実際のそばを見せてもらうと、根がしっかりと張っています。

私たちは玄そばになった状態で原料を受け取りますが、その一粒ができるまでには、こうした日々の土づくりがあります。

製粉所に届いた玄そばだけを見ていては分からないことです。

北はるか農協下川支所の蕎麦調整施設

美深町で2年ぶりの再会

下川町から美深町へ移動し、「むつみ食堂」で昼食。

午後はJA北はるか本所を訪問し、遠藤部長と情報交換しました。

遠藤さんとは2年ぶりの再会です。

お元気そうで何よりでした。

産地の担当者とは、作柄が良い年だけお付き合いするわけではありません。

不作の年もあります。
価格が上がる年もあります。
収穫量が読めない年もあります。

そういう時も含めて長く情報交換を続けられることが、安定した原料調達につながります。


音威子府のそば畑へ

音威子府村のそば畑

続いて、今回の大きな目的地の一つ、音威子府村へ向かいました。

残念ながら雨。

傘を差しながら、いくつものそば畑を見て回りました。

それでも、実際に来てみなければ分からないことがたくさんあります。

まず感じたのは、そばの繁茂の強さです。

茎葉がよく茂り、しっかりした畑が広がっていました。

音威子府は冬になると1〜2mほど雪が積もる地域です。

厳しい冬を越した土地で、短い夏の間に一気にそばが育っていきます。

播種量について伺うと、10a当たり約8kg。

長野県では5kg前後で播くことも多いため、かなり多い印象です。

地域が違えば、同じそばでも栽培方法は大きく違います。


北海道でも「暑さ」が問題になっている

今回、音威子府で特に印象に残ったのが、近年の夏の高温です。

北海道というと「涼しい」というイメージがありますが、近年はこちらでも夏の暑さがそばの生育に影響しているとのこと。

音威子府では、早く播いたそばよりも、少し遅く播いたそばの方が収量が多くなる傾向が見られるため、播種時期を従来より1週間ほど遅らせているそうです。

今年も、9月上旬になってなお白い花が残っている畑が多くありました。

音威子府はもともと北海道の中でも収穫が遅い地域ですが、今年は特に遅いそうです。

畑の写真だけを見ると「まだ花がきれいだな」と思います。

しかし製粉会社として見ると、

「実はどこまで黒化しているか」
「収穫まであと何日か」
「この後の天候はどうか」

と、どうしてもそんなところが気になります。


音威子府駅へ

音威子府駅の様子

畑を見た後、音威子府駅にも立ち寄りました。

大西製粉では「音威子府産 玄挽き黒そば粉」を販売しています。

その原料産地の名前が付いた駅に実際に立つと、少し特別な気持ちになります。

日本で最も北にある駅そば

駅には有名な駅そばがあります。

……ところが、この日は木曜日。

定休日でした。

音威子府まで来て食べられないとは(笑)。

残念ではありましたが、それでも、音威子府産そば粉を販売している者として、この土地に来ることができたこと自体がうれしく、駅の中をかなり楽しく見て回りました。

この日は朝8時に旭川を出発し、ホテルへ戻ったのは夜7時。

夜は旭川名物の新子焼きをいただきました。

長い一日でした。

北海道旭川名物「新子焼き」

3日目 沼田町。今年の新そば受け入れ開始

沼田町のそば精選

最終日は、JA北いぶきの沼田町へ。

新しく担当してくださる岡部さんと情報交換を行いました。

ちょうどこの日から、今年産そばの精選施設が稼働を開始。

新そばの受け入れが始まっていました。

今回3つの産地を回って興味深かったのは、収穫後の玄そばの扱い方が、それぞれ違うことです。

沼田町では、生産者自身が乾燥・調製した玄そばをJAの精選施設へ持ち込みます。

下川町では、生産者による組織をつくり、約5年前に乾燥から精選まで行える施設を新設しました。

音威子府でも、生産者組合が乾燥・調製施設を所有しています。

そば打ちをされる皆さんが目にするのは「そば粉」ですが、その前には、

収穫 → 乾燥 → 調製 → 精選 → 玄そば → 製粉

という長い工程があります。

この途中の一つひとつが、最終的なそば粉の品質につながっています。


キタワセソバから「キタミツキ」へ

北海道では現在、そばの品種転換も進んでいます。

今回視察した地域では、

沼田町はキタワセソバ、
下川町はキタミツキ、
音威子府はキタワセソバ、

が栽培されています。

現地で伺った話では、今後北海道では「キタワセソバ」から「キタミツキ」へ段階的に切り替えていき、2028年産を一つの節目として一本化していく方向とのことでした。

そば打ちをされる方には、これから数年、

「北海道産」という産地だけでなく、「品種」もぜひ意識してみていただきたい

と思っています。

同じ産地でも、品種が変われば味や香り、製粉した時の性質にも違いが出ます。

私たちも、その変化を見ながらそば粉づくりをしていきます。


多度志、東神楽でも順調な生育

沼田町から旭川へ戻る途中、多度志地区のそば畑も見ました。

こちらも順調です。

さらに旭川空港周辺の東神楽町でも、良い生育のそば畑を見ることができました。

3日間でかなり多くの圃場を見ましたが、今年は今のところ、

強風で大きく倒れてしまった畑や、雨による生育不良が目立つ畑は、ほとんどありませんでした。

もちろん、収穫が終わるまでは油断できません。

しかし、現時点での2026年産北海道そばは、かなり良い印象です。

これまでの経験でも、収量がしっかり確保できる年は、玄そばの品質も安定し、良質な原料がそろいやすい傾向があります。

このまま無事に収穫を迎えてほしいと思います。


45kgの麻袋が、当たり前ではなくなってきた

今回の視察では、もう一つ強く感じたことがあります。

それが物流の変化です。

これまで北海道産玄そばは、45kg入りの麻袋で流通するのが一般的でした。

ところが近年、この麻袋での出荷を続けることが難しくなっています。

産地では、麻袋の口を縫う作業をできる人が減っています。

物流でも、45kgの麻袋を一袋ずつ扱えるドライバーが少なくなっています。

さらに麻袋そのものの価格も上がっています。

そのため北海道では、大手製粉会社向けを中心に、フレコンバッグでの流通が増えています。

大量輸送という点では、フレコンの方が圧倒的に合理的です。

しかし、大西製粉のような小規模な製粉所にとっては、45kg単位で玄そばを仕入れられることに大きな意味があります。

今回訪問したJAの皆さんは、そうした小規模な製粉所にも玄そばを届けてくださる、非常に大切なパートナーです。

玄そばは、注文すれば自動的に届くものではありません。

畑でそばを育てる人がいて、
収穫する人がいて、
乾燥・調製・精選する人がいて、
袋に詰める人がいて、
運んでくれる人がいる。

そのすべてがつながって、初めて小諸の大西製粉まで玄そばが届きます。

今回、改めてそのことを実感しました。


今年の新そばが、もうすぐ小諸へ届きます

北海道沼田町そば畑2026

今回視察した沼田町の玄そばは、9月中に大西製粉へ届く予定です。

そして、10月1日から北海道産の新そば粉として販売する予定です。

畑で実際にそばを見て、
生産者の話を聞き、
JAの皆さんと作柄を確認し、
乾燥・調製・精選施設まで見てきました。

その玄そばが小諸に届き、私たちが製粉し、そば粉となって皆さんのところへ届きます。

そば粉の袋を開けた時、その向こうに北海道の広いそば畑を少し思い浮かべてもらえたらうれしいです。

今年の北海道産新そば。

私自身、製粉するのを今から楽しみにしています。

この記事を書いた人

大西 響のアバター 大西 響 大西製粉5代目

大西製粉5代目社長 大西響
霧下蕎麦の名産地として知られる長野県小諸市で、そば粉専門の粉屋を営んでおります。地元の良質な蕎麦を全国のそば打ち愛好家様にお届けできるように、日々奮闘しております。

奥深い蕎麦の世界、知れば知るほどその面白さは増していくようです。 どうぞ細く長く縁起の良し蕎麦のように、末永くお付き合いください。

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